中川運河

  • 空間コード研究の出発点は,私たち研究チームが名古屋・中川運河の再生運動へのかかわりから始めたフィールド調査にあります。

    中川運河は,名古屋港と名古屋都心を結ぶ長さ8km余りの運河で,1932(昭和7)年に全線開通しました。この運河には,広々とした水路の全区間が港湾地区に指定され,いたる所で荷の積み下ろしが可能だという,大きな特徴があります。産業都市名古屋の物流・工業の軸となるべく生まれた中川運河は,昭和の名古屋の申し子だったと言えるでしょう。

    しかし,1960年代に取扱貨物量が頂点に達した後は,貨物のコンテナ化とトラック輸送の普及により,中川運河は物流軸としての機能を失っていきます。それから半世紀近くが経った今日,自然環境と一体化したスケールの大きな土木遺産たる中川運河を名古屋の「第二の自然」として再評価し,新しい利用価値を見出すべきときが来ています。

    中川運河空間コード研究のチームは,地理学,建築,都市計画,造園学,コミュニケーションデザインといった多様な分野の専門家から構成されています。この研究がなければ出会わなかったかもしれないメンバーが,中川運河というフィールドを共有することで,連日のように議論を交わしました。

    『空間コードから共創する中川運河―「らしさ」のある都市づくり』(鹿島出版会,2016年)は,空間コード研究の中間総括に当たります。関心をもたれた方はぜひご一読ください。

    都市コミュニケーション研究所では,中川運河での経験を下敷きとして,空間コード研究をより一般性のある方法論とすべく,他のフィールドにも対象を広げながら研究を蓄積しています。

    〔リンク〕「中川運河 企画展―もっと知りたい中川運河―」(2017年4月25日~5月7日,於名古屋都市センター)での都市コミュニケーション研究所の出展資料。空間コード研究の考え方を平易に説明し,中川運河の12コードを紹介しています。

    〔Link〕Tangible and Intangible Contexts of the City as a Mediator of Change --- A brief summary of the Spatial Codes Project, available in English.

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