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グローバル競争の圧力のもと,世界各地で借り物の商業モデルに頼ったブランド都市が増えています。そういう時代だからこそ,普通の町にして,個性の絡まりがつくる非凡な都市へ脱皮するための方法論が必要とされるのではないでしょうか。
都市コミュニケーション研究所では,ランドスケープを重視する地理学の視点から出発して,人と土地の関わり,そして関わりを共有する人々の交点に現れる都市の「らしさ」を探求する研究実践を推進しています。研究は,分析と応用の両面で構成されます。
【分析】
都市の持続的空間文脈(らしさ)を空間コードの概念によって可視化し,市民が継承・進化させるべき持続的空間文脈として価値化するための方法論を構築します。空間コードは,次の3つの視点から組み立てられます。
■都市のランドスケープ:
自然と人間の相互作用が到達した新たな平衡状態
■地域の当事者:
ランドスケープを舞台装置として都市をつくる主体
■インタラクションの空間:
地域の当事者どうしが関係を取り結ぶ空間
【応用】
空間コードをコミュニケーションツールとして実践投入し,都市政策の意思決定で取り上げるべき論点を提案するための筋道を示します。そのために,相互に関連し合う次の取組みを試みています。
■空間コードを視覚的に表現する普及メディアの開発
■空間コードを導線とするオープンディスカッションの開催
■ディスカッションをふまえた都市づくりの論点提示
空間コード研究の出発点は,私たち研究チームが名古屋・中川運河の再生運動へのかかわりから始めたフィールド調査にありました。中川運河での経験を下敷きとして,一般性のある方法論の確立をめざして,他のフィールドに対象を広げながら研究を蓄積しています。
都市コミュニケーション研究所は,空間コードを中核的なツールとして,地理学が得意とする「診断学」から工学的な「計画学」への橋渡しをはかることを目標の一つとしています。研究の成果は,学術的貢献のみならず,地域の課題解決能力向上に寄与するものと考えます。
〔リンク〕「中川運河 企画展―もっと知りたい中川運河―」(2017年4月25日~5月7日,於名古屋都市センター)での都市コミュニケーション研究所の出展資料。空間コード研究の考え方を平易に説明し,中川運河の12コードを紹介しています。